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2025.10.08
総務トレンド情報

最低賃金引上げを仕事と賃金のあり方を見直す契機に

1. 最低賃金の最新動向

政府が最低賃金額について全国平均1,500円以上を目指す中で、長野県の地域別最低賃金も令和7年10月3日以降、前年より+63円の1,061円/時となりました。最低賃金法には、違反した場合の罰則(50万円以下の罰金)の定めもあるため、適法な賃金支払いを行うことは、企業の最優先遵守事項です。

しかし、特に中小零細企業にとって、単に法制度の求めによるコストの増加は、容易に受け入れがたい負担感をともなうものとも思われます。物価高・人手不足といった困難な経済状況下において、むしろ、この「最低賃金引き上げ」を、「どのように企業活動に活かしていくか」という視点が大切になります。

2. 対応のカギ:価格転嫁・賃金制度・効率化の統合

最低賃金の上昇は、次の3つの視点を同時に見直す契機です。

  • 価格転嫁+経費削減で原資を確保

生活消費財やエネルギー・原材料などを中心に、物価は引き続き高騰傾向にありますが、その流れに乗じても人件費の増加分をすべて自社の製品・サービス価格に転嫁するのは難しいでしょう。

 価格転嫁と同時に経費見直し(仕入れルート見直し・固定費削減など)を進め、支払い余力を高める必要があります。

 また、政府は「労務費の適切な価格交渉に関する指針」を出しており、取引先との交渉を制度的に支える枠組みも整っています。

  • 賃金バランスとモチベーション・スキル向上の制度設計

 最低賃金をただ上げるだけでは、従業員間での不公平感や賃金格差の歪みが生じえます。

 そこで、経験・責任・成果・技能に応じて昇給できるルートを明確にし、能力開発制度(研修・資格取得支援など)を併設することが重要です。

 既存の従業員や新規採用希望者に、自社の賃金制度に込められた想いを伝えることで、モチベーションやスキルの向上につなげていきたいところです。

③業務効率化で「時間あたり成果」を高める

 単にコストを増やすのではなく、生産性を上げる側に舵を切ることが持続可能な対応策です。具体的には、業務プロセス見直し、IT導入、自動化、省力化、マルチ業務対応化などを通じて、同じ時間で出せる付加価値を高めていきます。

3. 簡易ロードマップ:対応の流れ

ステップ内容
①現状把握・影響試算最低賃金近辺の人数・時間を洗い出し、引上げ後の人件費増を算定
②賃金制度・評価制度改善最低賃金を下限に据えつつ、能力・成果による昇給ルートを整備
③価格交渉+コスト見直し取引先交渉、仕入れルート見直し、固定費削減を同時に進める
④業務効率化実施IT化、自動化、業務プロセス改善で生産性を高める
⑤助成金・補助金活用国・県の制度をチェックして申請準備
⑥体制整備・チェック給与計算・勤怠管理のテスト、法令順守の確認
⑦従業員説明・フォロー変更内容を丁寧に説明し、理解を得る仕組みを整える

4. 結びに:見直しのチャンスを活かす

最低賃金引上げは、確かに負荷を伴いますが、仕事と賃金のあり方を見直す契機と捉えることができます。

価格転嫁と経費削減で原資を確保しつつ、賃金体系を能力格差に応じて設計し、業務効率化で生産性を高める。この3本柱を併せ持つ対応が、中小企業を持続可能な方向へ導く鍵です。

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